生き物共生ブランド米の最前線(ちょい長)
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作成日時 : 2008/09/15 14:30
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現在発売中のBE−PAL10月号『ゲンキな田舎!』は、生き物共生ブランド米の最前線を追って、滋賀県高島市が取り組んでいる「たかしま生きもの田んぼ米」を取材しています。
生き物共生ブランド(環境共生高自然価値農産物)という視点での取材は、2005年10月号、2007年8月号、10月号に続き4回目です。なぜしつこく同じテーマを追いかけているのかというと、日本の環境や食、農業が抱える問題を同時解決する可能性を持った、最も旬の話題だという確信があるからです(っていうか個人的な予感ですけど)。
環境共生米とは、わかりやすくいうと、生き物がたくさん息づく田んぼで採れた米。
最近は農水省も強い関心を示しており、来年から「生き物ブランド農産品」の認証を始めるということです。
稲作は水をたくさん必要とすることから、大雨が降ると一時的に水たまりができる氾濫原や、低湿地を拓いて行われてきました。
水を出し入れする水路は川や湖と緩やかにつながり、背後には良好な山林もあることから、水田は開発地でありながら、生物多様性を補完し、種によっては開発以前よりも住みやすい環境を提供してきました。
その機能が失われたのは、この50年ほどの間です。
稲作が機械化・集約化されて水路がコンクリートになり、ついには用水路さえなくしてパイプラインから蛇口で水を入れるしくみになりました。
より水管理がしやすいよう暗渠化、水がいらないときは深く掘り下げた排水路へ落とします。
田んぼと排水路の落差はときに1mにも達し、仮にサケであっても飛び越えることは困難です。
川や湖とのつながりが実質的に断たれたことで、春の雨が降ると田んぼに入って産卵していたフナやドジョウ、メダカ、ナマズなどの魚の姿が消えました。
除草剤や殺虫剤などの農薬も、生物多様性を低下させた大きな要因です。
レイチェル・カーソンの『沈黙の春』の時代ほどではないにせよ、化学物質は今も生態系に負荷をかけ続けています。
米づくりの技術もよりテクニカルになり、田んぼから水を落とす時期なども細かく計算されています。
1粒でも多く米をとるためには、オタマジャクシの足が出そろおうが出そろうまいが関係ありません。急に水を抜かれたおたまじゃくしは干からびて死んでしまいます。
そんなふうに、効率化を突き進んできたのに、待っていたのは米余り現象。
単価が上がらず、消費量も増えないので、農家は減反を押し付けられるというありさま。
この悪循環を打破するためのアイデアのひとつが、環境共生米なのです。
簡単に云うと、生物多様性の回復に寄与する稲作の米を、理念を共にできる方々に、労力に見合う対価で食べてもらおうという仕組み。
米の価値は、これまで食味などの品質や、もっぱらわが身の安心安全という視点からで決まってきましたが、味や健康以外の、今ふうにわかりやすくいえばエコロジー的要素にもお金を払ってもらおうというものです。
もっとも有名なのは、コウノトリの野生復帰計画に合わせ、十分な採餌できるような水田に転換した兵庫県豊岡市。
ここでできた米はコウノトリ米というブランドになっています。今月下旬にトキの放鳥が行われる佐渡でもトキの生息環境を提供する水田の米をブランド化しています。
このほか、オオヒシクイやタゲリ、カモなどに水田を越冬地として提供している地域が全国にあります(できた米はブランド化されている)。
最近では、谷津田の生態系の頂点に立つフクロウをシンボルにした米もありますし、アカトンボ、ゲンゴロウ、ホタル、メダカ、シナイモツゴなどの水生生物もブランド化されています。
高島市では、一昨年から有志が有機農法研究会を作り、生き物が利用しやすい水田と稲作技法の研究を続けてきました。
どんな稲作かというと、ざっと次のような感じです。けっこう乱暴に端折ってあるので正確ではありません。あしあらず。
@ 早期湛水で先に雑草を芽生えさせ、これをかき回して駆除。早くから水を張ると水田生態系のお米に相当するミジンコやイトミミズも増えやすい。鳥も羽を休める。
A 光をしっかり当て健康的に育てた成苗を遅い時期(6月後半)に、密度をかなり少なめに植える。植えたばかりは、どこに苗があるんだと思うほど心細くなるが、夏には見違えるほどたくましく育っている。
B 根付いたのを見計らって2回目の除草。米糠を散布し再び芽生えた雑草を発酵の際に出る有機酸で焼いたり、酸欠状態にして枯らしてしまう。これでかなりの被害を防ぐことができる。
C 水路と田んぼの水の落とし口の間に、木製の手作り魚道を設置する。雨が降って田んぼの水が増えると、水路から魚が登る。幅わずか25cmほどだがかなりの遡上効果が確認されている。田んぼの脇には水を落としたときにオタマジャクシやメダカ、フナの稚魚が退避できるビオトープが掘ってある。
D 生物量が格段に増え、生態系のバランスがとれることで、害虫だけが大量発生するという構造になりにくい。カエル、トンボ、ツバメなど害虫を捕食する生き物も多い。稲も苗の段階から強健に育てているため、病気に対する抵抗力も比較的強い。
生き物の回復量は当の農家自身が驚いているほどで、秋の刈り入れのときは、コンバインの周りに、チュウサギを中心としたサギ類がまるで放し飼いの鶏のように集まります。
ナゴヤダルマガエルなどの餌生物が濃密にいるため、近在の鳥がみんな集まってくるのだそうです。
写真提供/アミタ株式会社持続可能経済研究所
『たかしま生きもの田んぼ米』の面白いところは、こうしたすべての生き物を主役と位置付け、あえてスター生物をブランドの前面に出していないところです。
あくまで「生物多様性」を「回復する取組み」に、ロマンを感じてもらうという姿勢に徹しているのが斬新といえます。
この方向性を決めたのは、市から生物調査を受託されているアミタ株式会社持続可能経済研究所の本多清主任研究員。彼は多田実というペンネームも持つ自然系ライターで、じつはわれら雑魚党の政釣会長でもあります。彼はこのように言います。
「生物多様性というのは地域によって特色があり、数が多いからよいというわけではありません。貴重な生き物が生息するからよいというものでもない。生物多様性の真の豊かさとは、その地域の歴史を反映する昔ながらの生き物が、ごく普通に生息することです」
つまり、本来いるべき生き物が今もいることが重要なのであり、スター生物のネームバリューに依存し過ぎると、その基本原則が伝わりにくいおそれがある、というのです。
なるほど、それも一理あるなあと、ひとつの方向性だなあと感じ入ったのであります。
で、気になる米の販売実績ですが、スター生物を打ち立てなくても、消費者の反応はかなりいいらしい。
減農薬タイプと無農薬タイプがあるのですが、人気があるのはより値の張る無農薬タイプで、平成19年産は、夏前にはすべて売り切れたとか。
手ごたえを感じ、栽培面積を10倍に増やした農家もあるほどです。
一円でも安いものを買いたいというのは、消費者として当然の意識だと思いますが、世の中には安物買いしてはいけないものもあります。
そんな例がまたも世間を騒がせています。
事故米なんていう「商品」が世の中にあったんですね。
車で言えばスクラップですけど、事故で大破した車を継ぎ合わせて中古車として売るよりタチが悪い。回収されたあの焼酎群の1、2種類はワタシも飲んでたかも。
今日の新聞では、パルシステムが予約登録米制度を始めたという広告が出ていました。
農家と契約を結ぶことで、2003年の大凶作のときのように米の値段が高騰しても消費者が振り回されない、一種の安全保障だとか。
島根県では、万が一都会で食料事情が悪化した場合でも出身地の田舎から米が送られてくる互助システムを構想しているNPOがあるそうです。
事故米ならぬ「自己米」ですね。
売る、買うという単純な関係は今後も流通の基本であるにせよ、より深い信頼関係や理念の共有で結ばれた取引が築かれつつあり、それが食の根幹である米から始まっていることに、一筋の光明を見る思いがするのであります。
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ジュゴン物語 2008/09/17 23:15 |